カルメン-解説

登場人物 カルメン:

ドン・ホセ:


ミカエラ:

エスカミーリョ:


フラスキータ:

メルセデス:

モラレス:

レメンダード:

ダンカイロ:

スニガ:

合唱:

恋多き情熱的なジプシー女

龍騎兵の伍長、母親を愛する純粋な心を持つものの、優柔不断な性格から身を滅ぼす

ドン・ホセの婚約者、彼をひたすら愛する心優しい17歳の村娘

セヴィリアの花形闘牛士(エスパーダ)カルメンに魅せられドン・ホセの恋敵になる

カルメンの友人のジプシー女

カルメンの友人のジプシー女

ドン・ホセの同僚

密輸業者

密輸業者

ドン・ホセの上官、ホセと決闘をする羽目に・・

≪龍騎兵、ジプシー、密輸業者、タバコ工場の女工、町の人たち≫

合唱は、 ソプラノ、アルト、テノール2、バス2の6部に
子供の合唱が加わる
あらすじ  台は1820年頃、スペインのセヴィリアとその近郊。

 バコ工場で働くジプシー女、カルメンはその美貌で男たちの憧れの的。しかし、龍騎兵の伍長でミカエラという婚約者がいるドン・ホセだけはカルメンに興味を示さない。

 僚とケンカをし、怪我をさせて捕まったカルメンの護送を命じられたドン・ホセ。カルメンは「逃がして」と誘惑し、ホセは次第に気持ちをぐらつかせ始め、ついに逃がしてしまう。そのために営倉送りとなったドン・ホセだが、釈放の日、早速カルメンに会いに来る。帰営ラッパが鳴り、帰ろうとするホセに「自分を本当に愛しているなら、自分達の密輸仲間に入れ」と言うカルメン。初めは断るものの承知してしまうドン・ホセ。ところが、カルメンの心は人気闘牛士のエスカミーリョに移ってしまい、ドン・ホセは捨てられてしまう。

 ルメンへの思いを断ち切り難いドン・ホセは闘牛場の前でカルメンを待ち伏せし「よりを戻してくれ」と嘆願するが、カルメンからは相手にされずついにカルメンを短刀で刺し殺してしまう。
曲目紹介
前奏曲

   前奏曲


 カルメンの開幕に先立って、前奏曲が演奏される。

 前半は、闘牛士たちの入場の場面で用いられる音楽を演奏し、その後第2幕でエスカミーリョの歌う<闘牛士の歌>のルフランの部分が、奏される。ゲネラルパウゼの後、アンダンテ・モデラート、ニ短調に転じ、前奏曲の後半に移る。弦楽器による5度のトレモロの上でモティーフが示される。このモティーフは<運命のテーマ>とされているものである。この部分は、完全終止せずに終わり、幕が開ける。
曲目紹介
第1幕

   第1幕 〜セヴィリアのタバコ工場前の広場〜


No.1 イントロダクション
タバコ工場の前にある衛兵の詰め所で衛兵たちが暇をもてあましている。彼らは、広場を行き交う人たちに目をやって、屈託がない。そこに田舎娘のミカエラがやってくる。ドン・ホセの許嫁である。髪を編んで後ろにさげ、青っぽいスカートをはいている。ドン・ホセに会いにきたのである。衛兵の交替前のため、「ここにはまだホセは居ない」とモラレスに言われ引き止められるが、ミカエラはいったん立ち去る。

No.2 行進曲と子供たちの合唱
衛兵たちの交替を告げるラッパの音がきこえる。モラレスの率いる衛兵たちは交代にそなえて整列する。隊長スニガをはじめとした交替兵がやってくる。子供たちは、はしゃいで衛兵たちと一緒に行進したりする。交替が終わり、交替兵のうちのひとりであるドン・ホセは、モラレスから娘が訪ねて来たと知らされ、それがミカエラだということを察する。

No.3 タバコ工場で働く女たちの合唱
休み時間を告げる鐘が鳴り、タバコ工場の女工たちがタバコをくゆらせながら出てくる。伊達男たちは、女工たちの中でもボス的な存在で、ことのほか男たちの心をかきたてるカルメンを待っている。そこにカルメンが華々しく現れる。

No.4 ハバネラ(恋は気むずかしい鳥)
取り囲んだ男たちをカルメンは冷たくあしらい、自分に全く関心を示そうとしないドン・ホセに興味をそそられる。カルメンは艶っぽい流し目をドン・ホセになげながら、恋というものは、野の鳥のようなものでままならぬといった内容の、いわば彼女の奔放な恋愛観を歌う。
カルメンは、歌い終わったあと、手にした花をドン・ホセに投げつけて走り去る。

No.5 情景(男たちの誘惑)
若者たちはカルメンにせまり、音楽が運命のモティーフが奏されるところで、カルメンはドン・ホセに歩みより、その最後の鋭い音で花を投げつける。女工たちが〈ハバネラ〉の一部を口ずさみ、休み時間の終わったことを告げる鐘がなる。

No.6 ミカエラとホセのデュエット
ドン・ホセが、カルメンの投げた花を手にして、それをポケットに押し込んだところに、ミカエラがやって来る。ミカエラは、ドン・ホセの母からことづかったと言って手紙と金を渡し、さらにお母さんからだと言ってドン・ホセにくちづけをする。そしてミカエラは、用を済ませたので帰って行く。ドン・ホセは、先ほどのカルメンの事を思い出す。それは、オーケストラによってカルメンが登場したときの音楽が奏されることで分かる。

No.7 合唱(女工たちのケンカ)
やがて工場の中が騒がしくなる。女工たちが喧嘩をしたのである。ヴァイオリンのトレモロが異常事態の発生を告げる。ソプラノとアルトのふた組に分かれた女工たちがスニガに訴える。騒ぎのもとは、カルメンが女工の一人を傷つけたことにあるようである。衛兵たちによって騒ぎは静められカルメンは騒ぎを起こした張本人ということで捕らえられてしまう。

No.8 シャンソンとメロドラマ(※本公演ではカット)
捕らえられたカルメンはスニガの尋問を受けるが、ふてくされたような表情で鼻歌を歌うだけである。
ドン・ホセがカルメンを見張り、さらに牢まで護送することになる。カルメンは、ドン・ホセと二人きりになったのを良いことにドン・ホセを誘惑する。逃がしてくれたらリーリャス・パスティアの酒場であなたを待っていてあげる、とカルメンは言う。

No.9 セギディーリャとカルメン、ホセによるデュエット
カルメンがドン・ホセの気を惹こうとして歌うのが〈セギディーリャ〉である。強い語調でカルメンをおし留めようとするドン・ホセだが、次第にカルメンの誘惑に負けていく。その過程が〈セギディーリャ〉の音楽が繰り返されるうちに明らかになる。

No.10 フィナーレ
短い前奏の後、チェロが先の女工たちの争いの部分の音楽を奏する。カルメンは〈ハバネラ〉の一節を、そ知らぬ顔で口ずさむ。ドン・ホセは、カルメンの後ろ手に結ばれている縄を解く。スニガから令状を受け取ったドン・ホセは、カルメンを連れて行こうとするがカルメンはドン・ホセを突き飛ばして逃げてしまう。アレグロ・ヴィヴァーチェによる音楽で、第1幕が終わる。
曲目紹介
間奏曲

  間奏曲(アルカラの竜騎兵)


 アレグロ・モデラート、ト短調、4分の2拍子。第2幕でドン・ホセのうたう〈アルカラの龍騎兵〉をもとにしている。弦楽器のピッチカートと小太鼓の刻むリズムの上で、ファゴットによってホセが口ずさむ〈アルカラの龍騎兵〉のメロディが演奏される。カルメンに逢いに行く喜びからか、軽快な曲調になっているが、悲哀さも感じられる。
曲目紹介
第2幕

  第2幕 〜セヴィリアの下町にあるリーリャス・パスティアの酒場〜


 セヴィリア城壁近くにあるリーリャス・パスティアの酒場に、カルメンの仲間である密輸業者のダンカイロやレメンダード、それにフラスキータとメルセデスがたむろする。

 第1幕から、ほぼ2ヶ月の時間が経過しており、その間ドン・ホセはカルメンを逃がした罪で営倉に入れられていた。カルメンはフラスキータやメルセデスと共に、ジプシーたちの奏する音楽にあわせて歌い踊る。

No.11 シャンソン(ジプシーの歌)
ヴィオラ、チェロ、ハープが刻むリズムの上で、フルートが主要旋律を弱音で奏して、開始される。いわゆる〈ジプシーの歌〉である。その音楽が楽器の数と音量を増しつつ、しかもアッチェレランドしながら繰り返され、圧倒的な盛り上がりをみせる。 酒場にはスニガが来ていて、そのスニガからカルメンはドン・ホセが釈放されたことを聞く。そこに、闘牛士を讃える歓声「闘牛士バンザイ」が聞こえてくる。セヴィリアの人気闘牛士エスカミーリョがやって来たのである。

No.12 合唱とアンサンブル(闘牛士バンザイ!)
男声4部合唱にのって、スニガたちの会話が続けられる。オーケストラがエスカミーリョを讃える音楽を演奏する。得意満面のエスカミーリョは、闘牛士の勇ましさを人びとに披露する。

No.13 クープレ(闘牛士の歌)
いわゆる〈闘牛士の歌〉である。エスカミーリョが「諸君らの乾杯を喜んで受けよう」というセリフで歌いだし、後にフラスキータ、メルセデス、カルメン等がルフランに加わる。 カルメンはエスカミーリョのさっそうとした姿に心をときめかし、エスカミーリョもまたカルメンを口説きにかかる。しかし、カルメンは自分のために営倉に入れられ、今にも訪ねて来るかもしれぬドン・ホセを待つ心づもりである。エスカミーリョと共に、人びとが去る。

No.13b 合唱(闘牛士の退場)(※本公演ではカット)
先ほどヘ長調で歌われた〈闘牛士の歌〉の後半の部分が、ここではホ長調で人びとによって歌われ、それがエスカミーリョたちの退場の音楽になる。 


No.14 クインテット  密輸業者のダンカイロ、レメンダードとカルメン、フラスキータ、メルセデスによる五重唱
店からひとびとが去ると密輸業者たちの密談がはじまる。声をひそめてダンカイロとレメンダードは、今度の仕事にはどうしても女の助けが必要だといい、フラスキータとメルセデスはそれに同意するが、ドン・ホセを待つカルメンは、その仕事に加わろうとしない。

No.15 レチタティーヴォ(※本公演ではカット)
遠くから、ドン・ホセが〈アルカラの龍騎兵〉の歌をうたいながらやってくるのが聞こえる。ダンカイロ達はカルメンにホセを仲間に入れろと言って奥に隠れる。

No.16 カルメンとホセによるデュエット
カルメンは律儀にも、そしてドン・ホセを仲間に引き入れる考えもあって、カスタネットを手に大いにもてなす。しかし帰営ラッパを耳にしたドン・ホセは帰ろうとする。カルメンは「こんなにもてなしているのにあんたは帰るっていうの」と言って怒る。ドン・ホセは、以前カルメンに投げ与えられ、今は見る影も無くし折れてしまった花を取り出して、いかにカルメンのことを営倉で思い続けていたかを訴える。<花の歌>である。ドン・ホセの気持ちが分からないこともないカルメンは、ドン・ホセに脱走を勧め、山で一緒に暮らそうと言い出したところで、ドアをノックする音が聞こえる。

No.17 フィナーレ
スニガがもどってくる。彼はカルメンを我が物にしようと狙っている。スニガはそこにドン・ホセがいるのを見とがめて、帰営するように命令するが、ドン・ホセはそれを拒む。ついにふたりは決闘することになる。騒ぎを聞きつけて集った密輸業者たちにスニガは取り押さえられてしまう。ドン・ホセはもはやカルメンたちの仲間に加わる以外にない。

曲目紹介
間奏曲

  間奏曲:アレグレット・クワジ・アンダンティーノ


アレグレット・クワジ・アンダンティーノ、変ホ長調、4分の4拍子
 この音楽は、もともと≪アルルの女≫のための付随音楽として作曲されたものといわれている。ハープによって奏される分散和音にのってフルートのうたうメロディは、大変に美しい。その美しいメロディはクラリネットに、さらにイングリッシュ・ホルンやファゴットに受け継がれる。
曲目紹介
第3幕

  第3幕 〜セヴィリア近郊のシャラ・マドム山地〜


No.18
 イントロダクション ダンカイロ、レメンダード、ホセ、カルメン、フラスキータ、メルセデスによる六重唱と合唱
ホルンによるト音が2度響いて開始され、ヴィオラとチェロによるピッチカートにのってフルートが行進曲風の旋律を奏する。ジプシーたちが荷物を背おってやってくる。その後密輸業者たちの合唱になる。ドン・ホセが一人、物思いに沈んでいるのでカルメンが尋ねる。ドン・ホセは言う、ただ母のことを考えていただけだと。フラスキータとメルセデスがトランプを手に占っている。カルメンがそのトランプを取って占うと、何度占っても結果は不吉なものばかりである。まずカルメンが死に、ついで恋人が死ぬという占いの結果は、すでにドン・ホセをうとましく思いはじめているカルメンにはひどく暗示的に受け取れる。

No.19 カルメン、メルセデス、フラスキータによるトリオ(カルタの歌)
カルメンのカルタの歌。これは歌われるというより、むしろつぶやきに近いもので、それだけにかえってトランプの示す不吉な結果をカルメンがどう受け止めているかがあきらかになる。ジプシーたちは準備が整ったので荷物を背おって去る。

No.20 アンサンブル カルメン、フラスキータ、メルセデス、ダンカイロ、レメンダードと合唱によるアンサンブル
明るい行進曲、ジプシーたちの退場のための音楽である。案内人に連れられてミカエラがやってくる。彼女は、ドン・ホセのことを気遣ってやって来たのである。どんなことがあっても愛するドン・ホセをつれて帰るのだと、ミカエラは、けなげにもその心のうちを吐露する。

No.21 ミカエラのアリア
ミカエラのいかにも女性的性格にふさわしい、やさしい美しさにみちたアリアである。人の気配が近づいたのでミカエラは、物陰に身を隠す。見張りに立っていたドン・ホセが人の近づくのに気付く。やって来たのはエスカミーリョである。ドン・ホセとエスカミーリョの恋敵同志のさやあてである。

No.22 ホセとエスカミーリョによるデュエット
エスカミーリョはカルメンを闘牛に招待してその場を去っていく。騒ぎがおさまったところで、物陰に隠れていたミカエラが見つかる。ミカエラはドン・ホセの母親が病気だということを伝え、田舎に帰るように勧める。ドン・ホセは、ミカエラの勧めに従う決心をするものの、エスカミーリョの後を追おうとするカルメンに嫉妬する。

No.23 フィナーレ
エスカミーリョの退場にあたっては、前奏曲の前半の音楽、つまり<闘牛士の歌>のルフランの音楽を、オーケストラがエスプレッシーヴォで演奏する。エスカミーリョを見送るカルメンの目は燃えている。そして母が危篤だと聞かされてミカエラと共に故郷に帰ろうとするドン・ホセと、そのドン・ホセを冷たい目で見るカルメンがにらみあう部分では、前奏曲の後半の音楽、つまり運命のモティーフが奏される。そして、遠くから<闘牛士の歌>のルフランの部分を口ずさむエスカミーリョの声が聞こえてくる。前奏曲において暗示されたものが、ここで現実のものになって浮かびあがっているという印象である。
曲目紹介
間奏曲

  間奏曲(アラゴネーズ)



アレグロ・ヴィーヴォ、二短調、8分の3拍子。まぶしいような、輝きと生気にみちた音楽である。オーボエによってもたらされるメロディを中心に、展開される。
曲目紹介
第4幕

  第4幕 〜セヴィリアの闘牛場前広場〜


No.24 合唱(闘牛場前の広場はお祭り騒ぎ)
これから闘牛がはじまるというので、大勢の人たちが集っている。
闘牛士たちが列をなしてやって来る。人びとの歓声はさらに高まる。カルメン、フラスキータ、メルセデスの姿も見える。フラスキータとメルセデスは、ドン・ホセの姿を見かけたから気をつけるようにと、カルメンに言う。気の強いカルメンがそんな忠告に耳をかすはずもない。

No.25 闘牛士達の行進曲と合唱
さまざまな闘牛士たちが、闘牛場への行進をおこなう。集まった人たちが歓声をあげるなか、エスカミーリョが登場して華やかさは頂点に達する。人びとが闘牛場に去った後、カルメンとエスカミーリョの短い二重唱になる。そしてフラスキータとメルセデスが、カルメンに忠告する。運命のモティーフが奏されて、ドン・ホセが、物陰から現れる。

No.26 カルメンとホセのデュエット・フィナーレ
人びとが去り、フラスキータとメルセデスも闘牛場に入って、カルメンが一人でいるところに、やつれはてた姿のドン・ホセが現れる。ドン・ホセはカルメンに愛を求める。カルメンはそんなドン・ホセを冷たく突き放す。闘牛場からはエスカミーリョを讃える歓声が聞こえてくる。カルメンは思わず闘牛士の方に走りよる。ドン・ホセがそれをはばむ。場内の歓声が一気に高まる。ドン・ホセは隠し持った短剣でカルメンを刺す。
表情を抑えたカルメンと、そのカルメンにとりすがるドン・ホセのコントラストが見事である。闘牛場から聞こえてくるラッパの響き、それは前奏曲の冒頭の音楽によっているが、それがカルメンとドン・ホセの間に張り詰めていた緊張をより一層のものとする。オーケストラが運命のモティーフを強奏する。エスカミーリョを讃える歓声は、当然のことに<闘牛士の歌>のルフランの音楽によっている。そして最後は、運命のモティーフが奏されて、全曲を締め括る。
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