第18回演奏会

2004.7.4

指揮者 藤崎 凡
独奏者  
演奏曲   メンデルスゾーン 序曲「真夏の夜の夢」
ハイドン 交響曲第100番ト長調「軍隊」
ロッシーニ 歌劇「アルジェのイタリア女」序曲
ドビュッシー
/ビュッセル
小組曲
チラシ  パンフレット

出演者
コンサートマスター 廣瀬 卓
第1ヴァイオリン 大宮伸二、上河幸彦、定永明子、瀬畑健雄
東家容子、山口修史、柚原三弥子*
第2ヴァイオリン 浦中有紀、岡本侑子、小野智恵里*、清永育美
清永健介、武智久子、丁 睦美、山口祐子
ヴィオラ 和泉希代子、太田由美子、城野加代子、田代典子
中澤康子、奈須慎也*
チェロ 石垣博志*、関 栄、瀬畑むつみ、東家隆典、松本幸二
コントラバス 井形友子*、仮屋友美*、中川裕司*
フルート・ピッコロ 泉 由貴子、中澤邦男
オーボエ・コールアングレ 上田愛彦*、橘 徹、吉田千草*
クラリネット 岡村クミ、府高明子
ファゴット 柴田義浩、星出和裕
ホルン 伊藤友美、川崎華奈
トランペット 出口文教、福島敏和
チューバ 府高 隆*
ティンパニ 福島 好*
パーカッション 小野上真樹*、早川武志*、山中美雪*
ハープ 矢澤みさ子*

*賛助























































序曲「真夏の夜の」Op.21(メンデルスゾーン)

 イギリスの文豪シェイクスピアが1595年頃書いた、全5幕の喜劇「真夏の夜の夢」にメンデルスゾーン
が作曲した、この序曲と劇音楽は、「ヴァイオリン協奏曲ホ短調」とともに、メンデルスゾーンの全作品を
通じて、最も愛され、親しまれている作品である。
 若い頃から読書家として知られていたメンデルスゾーンが、シュレーゲルとティークのドイツ語訳でこの
戯曲を読んだのは、1826年(17歳)の頃で、そのとき彼は、興のおもむくままにピアノ連打用の序曲を
作曲し、のちにオーケストラ用に編曲した。これが現在演奏される「序曲」である。しかし、このときに作曲
されたのはこの序曲だけで、あとの曲は、1843年(34歳)に、プロシア国王フリードリヒ・ヴィルヘルム
4世の命によって作曲された。だから、「序曲」と他の曲の間には、約16年ものへだたりがあるわけで
ある。この付随音楽の初演は、「序曲」だけが1829年にイギリスで行われ、全13曲は、1843年に
プロシア国王の離宮ポツダムの新宮殿で行われた。
 この劇の題名の中の「真夏」は、日本でいう盛夏のことではなく、1年中で一番昼の長い夏至(6月21
日)を指している。つまり、6月24日の聖ヨハネ祭が近づく頃になると、ヨーロッパでは幻想的な事件や
奇怪な事件が起こるという伝説があることから、この劇が作られているのである。
 「序曲」は、まず木管楽器による柔らかな4つの和音から始まる。続いて、妖精のたわむれを表すかの
ような夢幻的な第1主題や、若者たちの濃厚なラヴ・シーンを描くような艶麗な第2主題が現れる。この
ほかに朗らかなベルガマスク舞曲や、ユーモラスなホルンの旋律などが現れ、最後に再び妖精の世界
が描かれ、曲を閉じる。




























































 

交響曲第100番ト長調Hob.T-100「軍隊」(ハイドン)

この交響曲の第2楽章と第4楽章では、当時の交響曲としては異例のことに属する大太鼓、シンバル、
トライアングルといった軍隊用の打楽器が使われ、木管の使い方も第1楽章第1主題のように高い音域
が要求されるなど、斬新な手法にあふれている。また、その主題は2本のオーボエに伴奏された独奏
フルートで示されているが、これもハイドンとしては、一つの革新であった。
 こうしたトルコの軍隊風の色彩は、当時流行の異国趣味にも合致して、この作品は、早くからハイドン
の交響曲の中でも最も広く愛好され、親しまれる作品となっていたようである。
 「軍隊」という標題は、ハイドン自身によって付けられたものだろう。ロンドンで行われた初演の新聞
広告に、その名前が使われている。それが第2楽章に由来していることは、作品を一聴しただけで理解
されるはずである。リラ・オルガニツァータ(ハーディ・ガーディに似た楽器)協奏曲の第2楽章として書か
れたロマンツェからの編曲であるとされるこのアレグレット楽章では、楽器の編成を替え、無伴奏トラン
ペットのファンファーレと結尾部を新たに付け加えて、今の形にしたのであった。
 しかし、そうした軍隊的色彩は第2楽章だけのものではない。例えば第1楽章での2つの主題のリズム
は明らかに軍隊調である。
 この交響曲が当時のロンドンの聴衆にいかに愛好されたかということは、初演後も続いて何度となく
再演されたという事実からも明らかであろう。
 ある新聞は、その第2楽章が大変な拍手をもって迎えられ、「アンコール!アンコール!」という声が
ホールを満たし、婦人たちも熱狂したと伝えている。
 第1楽章はアダージョの導入部とアレグロの主部から成っている。導入部での最初の音の動きが、
主部の第1主題にも含まれているなど、導入部と主部との関連は以前にも増して緊密なものとなって
いる。導入部は短調に傾斜するが、それはハイドンが好んで使った手法であった。
 主部アレグロはソナタ形式。木管三重奏という珍しい形で提示される第1主題は弦楽(コントラバスを
除く)によって反復され、経過部に入ると再び2本のオーボエに伴奏されたフルートが属調で第1主題
を吹く。これもハイドンが常用した手法であった。
 この部分は属短調に進み、属音に達する。それは導入部と同じ手法である。そして第2主題はこの
ニ短調の属和音を手掛かりにして示されるのだ。
 この第2主題は楽章全体を通して特に重用され、展開部でも終始一貫その動機が使われている。
そして再現部でも第1主題に続く経過が極端に短縮され、第2主題を再現させる。
 結尾部でも第2主題が偏愛され、第2の展開部を思わせる入念充実した部分を作っている。
 第2楽章は2種の主題をもつ変奏曲だが、形の上では中間に短調部分を置く三部形式に近い。
 ファンファーレが響き、全オーケストラが変イ長調の和音を爆発させる手法はなかなか効果的である。
 第3楽章のメヌエットとトリオを経て、第4楽章はプレストのフィナーレ。これは、この交響曲でも特に
傑出した楽章であり、「ザロモン・セット」全体からみても、出色のものである。






















































 

小組曲(ドビュッシー/ビュッセル編)

「小組曲」は、フランスの作曲家クロード・ドビュッシー(1862-1918)によって、元々ピアノ連弾曲として
作曲されました(1889)。オーケストラ版は友人で指揮者のアンリ・ビュッセル(1872-1973)の編曲(1907)
によるものです。
 ドビュッシーは従来の作曲技法の伝統にとらわれない斬新な楽風で20世紀の音楽の扉を開き、後の
作曲家達に多大な影響を与えました。
 「小組曲」はそんなドビュッシーの初期の作品で、彼の楽風がまだ形成期にあったころのものです。
いずれも対照的な中間部を持つ4曲で構成されています:

 第1曲 En Bateau(小船にて)
   ハープの奏でる分散和音の上にフルート、木管、弦の奏でる優しい旋律が心地よく揺れ、動きの
  ある中間部へと導き、夢見心地の終末部へと続きます。

 第2曲 Cortege(行列)
   「ちょこちょこぴょんぴょんとはねていく」、夢の中のような行列が想像される軽快な旋律と、対照的
  な中間部から構成されています。

 第3曲 Menuet(メヌエット)
   オーボエとクラリネットの奏でる前奏から、ヴァイオリン、木管の奏でる物憂げな旋律が導き出
  され、ファゴット、ホルン、ヴィオラの奏でる心温まる中間部へとつながり、はじめの旋律で終わる、
  優美な舞踏の曲です。

 第4曲 Ballet(バレエ)
   ビートの利いた快活な旋律によって、うっとりするようなワルツが挟まれています。動きのある終結
  部はフルオーケストラでとても色彩豊かに終わります。

 さて、ドビュッシーは18歳の時、彼のパトロンでもあった14歳年上のヴァニエ夫人に激しく恋をして
いました。彼はバンヴィルの詩を元にした「艶めく宴」という歌曲を夫人にささげていますが(1882年)、
実はこの曲の旋律も「小組曲」第3曲に取り込まれているのです。また、ヴェルレーヌによる同名の詩に
現れる題名が「小組曲」第1曲、2曲の題名となっており、夫人への思い入れが見え隠れしています。
実はドビュッシーは1887年、行き過ぎた行動により、ヴァニエ氏の怒りを買い、以降夫人に会えなく
なっているのです。
 「小組曲」は、パリ万国博覧会が開催された1889年に作曲されています。さまざまな国の音楽が
演奏され、ドビュッシーにも大きな影響を与え、転機となりました。「小組曲」第4曲でも、例えば、後の
代表作「弦楽四重奏」につながる特徴的な3度−2度の音形がちりばめられています。感傷を断ち
切り、前向きに足を踏み出そうとしているようにも見えます。